5月31日は「世界禁煙デー」
更新:2024年5月1日
禁煙マーク
禁煙
「世界禁煙デー」は、世界保健機関(WHO)が禁煙を推進するために定めた国際デーの1つで、日本(厚生労働省)では、5月31日から6月6日までを「禁煙週間」とし、禁煙や受動喫煙防止に関する啓発活動が行われています。
喫煙が健康に与える影響は大きく、受動喫煙の危険性やニコチンの依存症を踏まえると、喫煙習慣は個人の嗜好にとどまらない健康問題であり、生活習慣病を予防する上で、たばこ対策は重要な課題になっています。
世界禁煙デーや禁煙週間をきっかけに、ご自身や周りの人の健康を守るため、禁煙や受動喫煙について考えてみましょう。
喫煙による健康影響
喫煙はがんをはじめ、脳卒中や虚血性心疾患などの循環器疾患、慢性閉塞性肺疾患(COPD)や結核などの呼吸器疾患、2型糖尿病、歯周病など、多くの病気と関係しており、予防できる最大の死亡原因であることがわかっています。
また、喫煙を始める年齢が若いほど、がんや循環器疾患のリスクを高めるだけでなく、総死亡率が高くなることもわかっています。
若者の健康と喫煙
2022年4月1日から成年年齢が引き下げられた一方で、喫煙に関する年齢制限については引き続き20歳以上とされています。
喫煙開始年齢の早さと全死因死亡には十分な因果関係があることが報告されていて、青少年期に喫煙を開始すると、20歳以降に喫煙を開始した場合に比べて、がんや虚血性心疾患などの危険性がより高くなります。17歳以下で喫煙を開始したグループでは20歳以降で喫煙を開始したグループに比べて、肺がんリスクが男性は1.48倍、女性は8.07倍高いことが分かりました。
また、喫煙開始年齢が若いと、その後の人生において喫煙本数が多くなり、ニコチン依存度がより重篤で、禁煙が成功しづらく、喫煙年数や生涯喫煙量が多くなり、その結果死亡や疾病発生リスクが増加します。
妊娠中の健康への影響
妊娠中の喫煙によって、胎児に多くの影響がみられます。また、お母さん自身にも様々な妊娠合併症のリスクを増大させます。また、周囲の方がたばこを吸うことで受動喫煙のリスクも考えられます。
考えられる喫煙・受動喫煙の障害 | |
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流産・早産 | 出血・早期破水 |
妊産婦死亡 | 前置胎盤・胎盤早期剥離 |
低出生体重児(2,500グラム未満) | 周産期死亡(注釈) |
将来の子どもの肥満や糖尿病のリスク | 先天性疾患 |
発達のおくれ |
(注釈)周産期死亡とは、妊娠22週以降に死産したり、生後1週未満に新生児が死亡すること。
加熱式たばこの健康影響
加熱式たばこは、喫煙者本人及び周囲への健康影響や臭いなどが紙巻たばこより少ないという期待から、使い始める人が多くいます。
化学成分を分析した結果からは、加熱式たばこの主流煙には、多くの種類の有害化学物質が含まれるものの、ニコチン以外の有害化学物質の量は少なかったと報告されています。しかし、販売開始からの年月が浅いため、長期使用に伴う健康影響は明らかになっていません。
また、量が少ないとしても、たばこ煙にさらされることについては安全なレベルというものがなく、喫煙者と受動喫煙者の健康に悪影響を及ぼす可能性が否定できないと考えられています。
受動喫煙による健康への影響
喫煙者が吸っている煙だけではなくたばこから立ち昇る煙や喫煙者が吐き出す煙にも、ニコチンやタールはもちろん多くの有害物質が含まれています。本人は喫煙しなくても身の回りのたばこの煙を吸わされてしまうことを受動喫煙と言います。
受動喫煙との関連が「確実」と判定された肺がん、虚血性心疾患、脳卒中、乳幼児突然死症候群(SIDS)の4疾患について、超過死亡数を推定した結果によると、わが国では年間約1万5千人が受動喫煙で死亡しており健康影響は深刻です。
受動喫煙による肺がんのリスクは1.28倍、虚血性心疾患のリスクは1.3倍、脳卒中のリスクは1.24倍とされています。さらに受動喫煙は子どもの呼吸器疾患や中耳炎、乳幼児突然死症候群を引き起こすことが指摘されています。また、妊婦やその周囲の人の喫煙によって低体重児や早産のリスクが上昇します。
受動喫煙を防止するための取り組み
2018年7月、健康増進法の一部を改正する法律が成立し、2020年4月から全面施行となりました。
望まない受動喫煙を防止するための取り組みは、マナーからルールへと変わりました。
- 多くの施設において、屋内が原則禁煙になりました。
- 20歳未満の方は、喫煙エリアへ立入禁止になりました。
- 屋内での喫煙には、喫煙室の設置が必要になりました。
- 喫煙室には、標識掲示が義務付けになりました。
禁煙の効果
禁煙による健康改善は若年で禁煙するほど効果がありますが、何歳であっても遅すぎることはありません。45歳まで、とりわけ35歳までに禁煙すれば、総死亡リスクがもともと喫煙しなかった人と同様のレベルまで改善することがわかっています。
禁煙すると24時間で心臓発作のリスクの低下がみられますが、その後比較的早期にみられる健康改善には、せきやたんなどの呼吸器症状の改善やインフルエンザなど呼吸器感染症にかかる危険が低下することがあげられます。禁煙後早ければ1ヵ月たつと、せきや喘鳴(ぜんめい)などの呼吸器症状が改善します。また、免疫機能が回復して、かぜやインフルエンザなどの感染症にかかりにくくなります。
さらに禁煙後1年たつと肺機能が改善し、禁煙2から4年後には虚血性心疾患や脳梗塞のリスクが約3分の1減少します。肺がんのリスクが低下するのは禁煙5年後以降と少し時間がかかりますが、禁煙して10から15年経てば、様々な病気にかかる危険が非喫煙者のレベルまで近づくことがわかっています。そのほか、禁煙すると顔色や胃の調子が良くなったり目覚めがさわやかになるなど、日常生活の中で実感できる色々な効果があります。
今こそ卒煙を
「禁煙デー」をきっかけに、自分と周りの人のために禁煙や受動喫煙について考えてみましょう。禁煙したいけれど、なかなか続かない人は、禁煙外来のある医療機関を利用しましょう。